レザークラフトで製作した革製品の販売方法・ノウハウ 第二回「型紙の考え方・縫い目の改善方法」

  • 2017.10.24 Tuesday
  • 10:56
こんにちは。Natt Leather(ナットレザー)、店長の高橋です(^^)


さて今回は【レザークラフトで製作した革製品の販売方法・ノウハウ】の第二回「型紙の考え方・縫い目の改善方法」です。

(前回からずいぶん間が空いてしまいました。。すみません!)

第一回「販売のメリット・使用皮革について」で作り方は作家さんや技法書を参考にしてください、と書きました。

ではなぜ技法に近い型紙や縫い目のことをノウハウの中で書くかといいますと、

販売しようか迷っている方や尻込みしてしまうという方は多くが


「自分の作品が本当に買ってもらえるのか自信がない」



「まだ見栄えが悪いからなんだか恥ずかしい」


といったことで悩んでいます。(当店調べ。実体験を含みます。)


こういった悩みを回転率を上げて数をこなすことで上達を早めて解消していきましょうというのが前回の記事でした。

ただ最初は自信が無くて踏ん切りがつかないこともあると思います。

そこで今回は型紙から縫い目を考えていくことで見栄えを改善して自信をつけていただきたいという内容になっています。

※ここで説明する縫い目とは手縫いの場合に限ります。ミシンでも同じような考え方ですが手縫いの縫い目の方がピッチが広いことが多く縫い目の不正確さが目立ちやすいので手縫いの縫い目について説明していきます。


それではいきましょう。


まず型紙の重要性について書く前に、これまで方眼用紙に定規とペンで型を起こしていた方に「型紙のデジタル化」をおすすめしておきます。

具体的には製図ソフト・CAD(キャド)で型紙を作っていってほしいのです。


※すでにデジタルで製図されている方は読み飛ばしてください。


これにはパソコンとプリンターが必要になります。この二つが揃っていない方にはハードルが高いと思います。

ですがプリンターをお持ちでなければコンビニやネットカフェでプリントアウト、またはお友達のを借りてしまうのも一つの手だと思います。

パソコン自体がないという方はこちらもお友達に借りることができれば最高です。(ソフトウェアのインストールは許可を得てくださいね!)


製図ソフトといってもレザークラフトの型紙は2Dで、複雑なことはしないのでフリーソフトで全然大丈夫です。

店長高橋は「AR_CAD」(エーアールキャド)を使っています。

CADのフリーソフトは他にもあるので使いやすいものが見つかればそれでいいと思います。

(AR_CADなら操作方法は聞いてもらえれば大体はお答えできると思います。)


「面倒だからそこまでしたくないよ!」という方もなんとかデジタル化してほしいと思います。

販売される場合に限らず紙とペンと定規とコンパスでアナログな製図をすることはレザークラフトの型紙作りにおいてはあまりメリットがありません。

ですからなんとしてでもデジタル化に踏み切ってほしいのです。

「初心者向けって言ってたのにそーゆーカンジならもういいや!読むのやーめた!」という方もデジタル化のメリットについてだけでも読んでいってください(^^;)


型紙をデジタル化することのメリット


・再現性が高い


・微調整が容易


・製図全体にかかる時間が短縮される


主にこういった点が挙げられます。


ひとつずつ解説しようと思いますがまずは「再現性が高い」、これはレザークラフトにおいて重要な要素です。

なぜ再現性が重要なのかというと例えば紙にペンで寸法を取りながら型紙を起こしたとします。

いつも同じ寸法になるでしょうか?実際は相当難しいと思いますし、時間も掛かります。

デジタルなら必要な時にプリントアウトするだけで同じ寸法の型紙が手に入ります。


逆に寸法がその都度狂うとどんな不都合があるのでしょうか。

通常は型紙を工作用紙や厚紙に貼って使いますが、紙は少しづつ変形してしまうので、半年に一回新たに型紙を用意することになったとします。

1月に売った作品と7月に売った作品で1〜2mm寸法がズレていたとしましょう。出来上がった革製品を購入したお客さんは気付かないかもしれません。

実際に作品の写真を見て1〜2mm寸法が違う作品が届いてもほとんど分からないと思います。

ではどうしてお客さんが気にならない程度のわずかな寸法のズレが不都合を生むのか。。それは縫い目、ひいては見栄えに影響します。


1mm違うだけで5mmピッチの縫い目は最後の穴位置が本来よりも80%手前の位置になります。実際に作ってみると分かりますがこれは結構目立ちます。

こういった縫い目の調整方法として多くの技法書では少し手前からずらして穴を開けていくように指示されていると思います。

ですが型紙上で穴あけの位置が正確になっていれば最後の調整は必要ありません。

もちろん穴あけの工程までにいくつか注意することはありますが「どうせズレるのだから型紙は適当でいい」ということにはなりませんし、型紙が正確であればあるほど作品作りは楽になります。

アナログで型紙を起こすとこういったズレを助長します。どうしても縫い目がうまくいかない、という方は型紙から見直す必要があるかもしれません。


また「微調整が容易」というのも非常に重要になります。

頭の中で考えた寸法で実際に作ってみたら革の厚みの分、もう少し長さが必要だった、、平面から三次元の立体に形を映していくのでこういったこともよく起こります。

「作ってみたらカードケースにカードが入らなかった」というのはレザークラフトでは定番ですね(^^;)

このときの微調整もデジタルなら2〜3分程度で済みますがアナログでは全てやり直しになります。

長ければ切ればいいのですが短ければ足すことは簡単ではありません。


またまっすぐな線を引かなければ切り出した革もまっすぐにはなりません。

アナログではペンと定規を緊張感を持って扱う必要がありますがCADソフトなら必ずまっすぐな線を引いてくれます。

複雑な曲線が必要な時も同様です。コンパスや特殊定規での制限を受けることは一切ありません。

そしてコンパスや曲線の引ける定規を使うよりも圧倒的に早く製図できます。

製図にかかる時間を短縮することでその時間を作品の向上に当てられます。


こういった理由からどうしてもデジタル化に取り組んでいただきたいと思います。そしてもうお分かりかと思いますが作品の見栄えを左右するのは型紙です。

(いくら革質がよくても縫い目がガタガタだったり外周のコバが曲がっていれば、作品の価値を低く見られがちです。)

形の部分ではほとんどすべてが型紙の時点で決まっているといっても過言じゃないと思います。それだけ型紙をしっかり作り込むということは重要なことです。


※製図をデジタルで行っている方はここから読んでいただいて大丈夫です。

前置きが長くなりましたがそれでは縫い目をきれいに仕上げることに焦点をあてた型紙作りの考え方を書いていきます。

型紙さえしっかりしていれば縫い目はかなりきれいに見えるようになります。まず縫い目がきれいに見えない理由から説明します。



一つは縫い方と糸と縫い穴のバランスになります。これだけは型紙ではなく針と糸の扱い方の問題になります。


二つめは「縫い線がまっすぐになっていない」からです。この場合まっすぐというのは革のコバと平行になっていないということでもあります。


三つめは「縫い穴の間隔が一定ではない」からです。5mmピッチならすべてが5mm間隔、4mmなら4mm間隔であればきれいに見えます。これが全体は5mmなのに一部は4mmや3mmなどになっていると均一性を欠いてきれいに見えません。


それでは改善方法です。三つのきれいに見えない理由のうち型紙が大きく関与するのは二つめと三つめです。


一つめの縫い方の改善には針を通す手順や向きを常に一定にすることが必要です。これについては型紙では改善できないので技法書を参考にしてください。

バランスについては基本的にはピッチが狭ければ細い糸、ピッチが広がれば対応してより太い糸を使えば自然な仕上がりになると思います。


二つめについてですが、型紙が曲がってしまっていれば縫い線も曲がります。縫い線が曲がれば当然縫い目も曲がり、きれいに見えません。

この点では型紙がまっすぐになっているか、革の裁断が曲がっていないかが重要になります。(曲線の場合は不必要な歪みがないか、ですね。)

裁断が上手く行えるかは慣れと切れ味の保たれた刃物が必要です。型紙の線がまっすぐに引けるかはデジタルならそんなに問題になりません。

どうしてもアナログで行う場合は寸法を慎重に型紙に落とし込み、歪みに注意して扱いましょう。


三つめは型紙時点でいかにピッチを固定化するかが重要です。特に手縫いの場合はこれが型紙作りにおいて非常に重要なことになります。

文だけでは分かりにくいので参考画像とともに説明していきます。

一例としてまず一辺が10cm程度必要な革小物があったとします。二つ折りのショートウォレットが一番イメージしやすいでしょうか。


まずこんな感じで必要寸法で形を製図します。ここでは計算をシンプルにするために5mmピッチで考えています。この寸法は外周ではなく縫い線です。

画像では縫い線ということがイメージしやすいように破線にしてます。


縫い線の寸法を決めてしまえば外周のサイズは勝手に決まります。画像のように縫い線の周りにコバからの縫い代を逆算して足すだけです。

(個人的な好みでコバからの距離は3mmにしてます。)



これが革にきちんとトレースできていれば1〜2mmズレて最後の2cmで恐る恐る調整する必要はなくなります。

型紙をしっかり作り込めば穴あけのズレを気にするストレスからは相当解放されます。


応用してみましょう。ピッチを4mmで今度はコバからの距離も4mmにしてみます。大きさも少し変えましょう。仮に11cm前後の長さが必要だとします。


こんな感じです。



↑これが↓こうなります。




この考え方が分かっていればどんなピッチや寸法や縫い代でもきれいな縫い目が出来やすくなります。


上にあげた二つでは角は直角でした。ショートウォレットならややフォーマルな印象になりそうですね。

角を丸めてカジュアルな印象にしたい場合はどうすればいいのでしょうか?

その答えはこちらになります。



縫い線の面取りする寸法をピッチの倍数にします。ここでも外周の面取り寸法は勝手に決まります。



画像ではピッチが4mmなのでR12にしてます。このRというのは半径のことで、縫い線の曲がり部分は半径12mmの円の一部で構成されています。

角を丸くすると厳密にはピッチに対応した半径でも若干ズレが出てきます。円周率から円の外周を求めるとR12では厳密には4mmピッチには合わないのです。

ですが角の穴あけは曲がっている分間隔が圧縮されるので十分きれいな仕上がりになります。

さらにこれを曲がりの部分だけで調整することで、型紙が左右対称である必要はありますが、例えば二つ折りのショートウォレットを折りたたんだ時に左右の縫い穴をかなり近い位置に持ってくることができます。

市場をみてもらえればおわかりになると思いますが、ここまで徹底的に縫い目を気にしている作品はそう多くありません。

縫い目をアピールするに十分足りる見た目に仕上がっていると思います。

こんな感じです。文字と寸法でごちゃごちゃしてしまってすみません。




また縫い穴を開ける際には菱目打ちを使う方が多いと思いますが、厚みのある箇所の穴あけにはぜひ菱キリを使ってみてください。

薄い革を二枚貼り合わせたくらいなら問題ないのですが厚みがあると菱目打ちでは表と裏の穴の大きさがかなり変わってきます。

表の穴が必要以上に大きくなると、糸と縫い穴とのバランスが悪くなり見栄えに影響します。

菱目打ちで開けたとしてもすべて同じならいいのですが、問題は箇所によってバランスが変わることで起こります。

刃幅の一定な菱キリなら厚みがあっても裏も表も縫い穴の大きさが変わりにくいので、裏側もきれいな縫い目に仕上げやすいです。

通常は菱目打ちを使い、厚い部分だけを菱キリで開けるというのもありだと思います。


次は型紙を革にトレースする際の注意点を縫い目をきれいにするという観点から書きます。

まずひとつは


「縫い目に関わる外周は1mm小さく製図する」


ということです。


型紙を厚紙に貼ってそれをさらに革にトレースすると革は型紙よりも大体1mm程度大きくなってしまうのです。

1mmのズレが少なくない影響を生むことは先に書いた通りです。

全てのパーツを1mm小さくする必要はありませんが、例えばウォレットの外周などはあらかじめ型紙を1mm小さく設計して印刷することをおすすめします。


あとトレース後の床処理時に考慮することのひとつとして「革の伸び」があります。

実際に作業をするとおわかりになると思いますが、革ってけっこう伸びますよね(^^;)

これが床処理をする際にどんな影響を及ぼすかというと、特に薄く伸びやすい革だと床処理をする前と後だと寸法が全然変わっていることがあります。

これを防ぐための手立てとして、トレースした寸法をまず荒裁ちして床処理を先にします。

そのあともう一回型紙を革にあててトレースをします。(革質や型紙の大きさにもよりますが寸法がけっこう変わっているのがわかると思います。)

床処理をしたあとにもう一回トレースして寸法を確認することで、比較的正確に型紙を革に反映させることができます。

作品の形状や処理の問題でこの順番で作業ができないことも多々ありますが、基本的にこの手順で進めると床処理自体も楽で、なおかつ寸法も伸びの影響を受けにくくなるのでおすすめです。



さてかなり長くなってしまいましたが、以上が縫い目をきれいにするための型紙の考え方です。

正解というのはひとつではないと思うので、今回の記事も数ある方法論のひとつとして考えてもらえたらと思います。

ですが直線で構成された作品はこの型紙の作り方で相当きれいな縫い目になると思います。角を丸めると若干難易度があがるかも。。

実際は曲線を多用したデザインなどでこの型紙上での縫い穴の設計が上手くあてはめられないこともあると思います。

その場合は紙の時点で縫い線や縫い穴をシミュレーションして確認していき、基点を何箇所か設定し型紙に落とし込んでおきます。

その基点を革にマーキングすれば常に一定できれいな縫い目が実現します。いつも最後の調整に苦労しているという方もこの方法を是非お試しください。



ここまででいい革を使ってきれいな縫い目が入った作品を用意することができました。

次に気になるのは「この作品をいくらで売ればいいのだろう?」ということですよね。

ここに悩んでいたり上手くいかないという方はすでに販売されている方でも結構多いようです。

次回は【レザークラフトで製作した革製品の販売方法・ノウハウ】の第三回「価格設定・利益の計算方法」をお送りします。


ご期待ください(^^)


ご覧いただきありがとうございました!


Natt Leather(ナットレザー)
店長 高橋 浩幸
http://leather-material.com
info@leather-material.com
〒174-0063
東京都板橋区前野町6-36-15-302
08012484194(平日10:00〜17:00)
コメント
ピッチからサイズを決めるのは為になりました。
製図もめんどくさがってアナログで適当にやっていたのですが、これを機にAR-CADにも手を出してみました。便利ですね。
ありがとうございました。
  • hi
  • 2018/09/16 5:24 PM
hi様

コメントありがとうございます!(^^)

ご参考にしていただけるところがあれば嬉しい限りです!

(画像の大きさの不揃いや、文章が下手なので読みにくかったと思います。すみません;)

また時折当店ブログをご覧いただけたら幸いです。

よろしくお願いします!
  • 店長 高橋
  • 2018/09/18 1:11 PM
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