革とその鞣しについて

  • 2017.08.11 Friday
  • 14:43
こんにちは。Natt Leather(ナットレザー)、店長の高橋です(^^)

いつも当店ブログをご覧いただき本当にありがとうございます。今回は革について、特に鞣しについて詳しく書いていきたいと思います。


※今回のブログ記事は長いので「趣味でレザークラフトをやっているだけだから革にそこまで詳しくなる必要はないよ!」という方は読み飛ばしてください;;


いまはネットやレザークラフトの技法書などがたくさんあるので情報が手に入りやすい時代になりました。

これはとてもいいことだと思います。情報が手に入りやすくなることでより大勢の方に革の良さに触れていただきもっと皮革産業が盛り上がることを期待しています。

ただ革という素材については誤解が多いことも事実です。

他の素材に比べても加工(鞣し)の工程が多く、数種類もの薬剤を使うことなどにより専門性が高いことが一つの理由かと思います。

雑誌や一般書籍では誌面や文量の都合で簡単にしか説明されていないこともあります。

ここでは誤解を解きつつ多少詳しく書いていこうと思います。


鞣しの種類はクロムとタンニンだけが書かれることが多いですが実際は多岐に渡ります。

クロムが主流なのは事実ですがクロム同様金属塩による鞣剤にはほかにもジルコニウム、アルミニウム、鉄などがあります。

理論上ほとんどすべての金属塩で鞣しが可能といわれていますので金でも鞣せるようです。

金で鞣したらds単価はいくらになるんでしょうね(’’;)


タンニン鞣しは植物タンニンと合成タンニンに分かれます。国産では組み合わせて使われることも多いです。

当店で取り扱う皮革の多くはイタリアのタンニン鞣し協会のものですが鞣しに使用されるのは植物タンニン(フルベジタブルタンニン)に限定されています。

国産でタンニン鞣しと呼称されている場合は再鞣しに合成タンニンを使用している場合があります。

合成タンニンの方が植物タンニンに比べて鞣剤として安いので比較的安価に革を鞣すことができます。


コメント欄にてご指摘いただき、改めて確認したところ鞣剤としての単価は合成・天然どちらも変わらないとのことでした。
誤解をしておりまして申し訳ありません。お詫びして訂正致しますm(_ _)m

ご指摘いただいたみきさま。ありがとうございました(^^)

※イタリアタンニン鞣し協会に所属していてもクロム鞣しを行うタンナーもあります。


タンニン鞣しの経年変化について「紫外線の影響により革の中のタンニンが表面に浮き上がってくることによるもの」とする表現を雑誌などで見たことがありますがこれは間違いです。

タンニン鞣しの変色などの経年変化は単純にタンニンや油脂分の酸化によるものです。結合したタンニン剤のみが紫外線によって革表面に移動することはありません。

ただタンニンはもともと水溶性なのでクロムなどに比べて水による影響を受けやすく、水濡れすると革と鞣し剤の結合が外れて流出しやすいのでこういった誤解が生まれたのかもしれません。


鞣しには必要に応じて前鞣し、主鞣し、再鞣しと工程を分けることがありますが鞣し剤を複数組み合わせることもできます。

これは鞣し剤が革と反応する際の違いを利用したものですが、例としてはクロムで主鞣しを行った後にタンニンで再鞣しを行うことで両方の性質を取り入れた皮革が出来上がります。

こういった鞣しはコンビネーション鞣し、混合鞣しと言われますね。3種類の鞣し剤を組み合わせることもあります。

あまり聞きなれない言葉だと思いますが再鞣しに使われる鞣し剤にポリマー鞣剤といったものも存在します。

レザークラフト向けに販売されているものには使われていないと思います。

アクリル重合体やウレタン重合体がこれにあたります。(重合体=ポリマーです。)

再鞣しに使われる鞣し剤は他にも樹脂鞣剤、反応性鞣剤といったものもあります。

それぞれに染色性や発色増進、物性の改良などいろいろな効果があり、衣料や工業製品など求められる品質に応じて使用されています。


混合鞣しについて誤解のある場合がありますが他のサイトで見かけた例ではクロムすべてがあたかも劇薬かのような表現で、タンニンの後にクロムは入れることが出来ないとありました。残念ながらこれも誤りです。

現在鞣しに使われるクロムは3価クロムで薬品メーカーさん曰く「舐めても大丈夫」と言われます。

それもそのはず3価クロムというのはミネラルとして極々微量ですが体の中にも存在します。もちろん自然界にもあります。

タンニンで主鞣しを行った後にクロムを入れることは可能です。その場合はクロム→タンニンの場合と区別して逆コンビネーション鞣しと言われている時期がありました。

鞣し剤にタンニン、クロム以外が用いられることも多いので今ではまとめて再鞣しとされる場合が多いようです。

鞣しに使われる3価クロムは塩基性硫酸クロムというものですがこの硫酸の部分が誤解の原因になったのではないかと思います。

3価クロムは安全と書きましたが3価クロムも燃焼や酸化など特定の条件下では6価クロムに変わるということが研究により知られるようになりました。

この6価クロムは鞣し剤以外にもメッキとして使用されていましたが発がん性があり毒性の強い物質です。

このことからクロムは鞣し剤として安価で取り扱いも容易であるため世界中で重宝されてきましたが近年脱クロムの動きも活発になっています。

そこで最近注目を集めているのがアルデヒド鞣しです。アルデヒドは有機化合物の一種ですが多くはグルタルアルデヒドやホルムアルデヒドとして鞣し剤に用いられ古くから実用化されています。

ホルムアルデヒドは水に溶けた状態でホルマリンになりますが昔はホルマリン鞣しとして使用されていました。

印伝革も一時期ホルマリン鞣しが利用されていたようです。シックハウス症候群の原因の一つとしてホルムアルデヒドが挙げられますがグルタルアルデヒドとともに毒性があります。

取り扱いに注意が必要なのは確かですが排水処理などは比較的容易で廃棄時にも有害物質が出にくいので重金属であるクロムに比べて環境負荷が少ない鞣し剤です。

比較的安価なためクロムに替わる鞣し剤としてグルタルアルデヒドなどは現在も研究が続いています。タンニンやクロムとの混合鞣しに用いられることもあります。


脱クロムというのは世界的な流れで代表的なものとしてエコレザーがあります。ヨーロッパが普及の中心になっていますが特にドイツは環境への意識が高く規制が厳しいことで有名ですね。
エコレザーも厳密にいうとクロムを全く使わないということではないのですが環境に及ぼす影響を考えてクロムに限らず極力排水などの処理について負担の少ない方法を選択していこうというものです。

国によって若干の差がありますがエコレザー基準が日本の場合は2006年から制定・運用されています。ヨーロッパでは1990年代、中国でも2002年には同じような基準が制定されています。


ハンドメイド作品の販売サイトで「タンニンで鞣された革はエコレザーとも呼ばれます」と書かれていたのを見たことがありますが、タンニンで鞣された革がすべてエコレザーに相当するわけではありません(^^;)
誤解を与えやすい表現なのでこれは例えば「天然有機物であるため植物タンニンで鞣された革は環境負荷が少なくクロム鞣しに比べてエコロジーな革」ということなら問題ないと思います。

また購入した革がエコレザーであるなら「この製品はエコレザー認定を受けた皮革で製作しています」でいいと思います。

日本ではエコレザーの基準が日本皮革産業連合会のもとに管理されていますがこの基準に合致しないものをエコレザーと呼称するのは誤解を与える表現になるかと思います。

エコレザーには工場単位での基準があり、その工場で生産される一部の皮革が基準を満たしていても工場の廃棄物や排水が基準外だと認定は取れないようになっています。


ここまでは誤解の多い部分を取り上げてみました。ここから革についてさらに詳しく書いてみます。


皮は皮の持つコラーゲンと鞣し剤の結合によって革になっていきますが、コラーゲンを構成するアミノ酸にはアミノ基とカルボキシル基と呼ばれる部分があります。

(基というのは原子の集合体のことですがこの場合は手のようなものと捉えてもらっていいと思います。)

鞣し剤はこのどちらかと手をつなぐ(架橋反応する)ことで耐熱性や耐薬品性、腐敗しにくくなるといった性質を革にもたらします。


植物タンニンによる鞣しは経験則的に古くから行われていましたが、クロム鞣しは比較的新しい鞣し法で1858年のドイツで開発されました。

その後一般的になるまでは時間がかかりましたが1960年頃にドイツの薬品メーカー(バイエル社)がクロム粉を販売したことで世界的に広まるようになりました。

クロムやジルコニウムなどの金属塩鞣し剤の場合はカルボキシル基と結合します。

タンニン、アルデヒドはアミノ基と結合します。混合鞣しはアミノ酸の結合先が違うことで実現します。

ただしアルデヒドで前鞣しを行うことで先にアミノ基にアルデヒドをある程度結合させてしまい、後からタンニンを入れることで残りのアミノ基に対してタンニンの結合を早めるような使い方をすることもあるそうです。


鞣しに掛かる時間としてクロムは短く、タンニンは長いということを聞いたことがあると思います。

このかかる時間はタンニンとクロムの分子量に依存しています。タンニンの方がクロムよりも分子が大きいので浸透に時間が掛かります。

厚革をピット槽で鞣すときに濃度を順に上げていくのもこう言った理由からです。最初から濃度の高いタンニン液に漬けても皮の表面付近で結合してしまい、先に結合したタンニンが浸透を阻害します。

対してクロムは分子が小さいので比較的短時間で皮の内部まで浸透して結合します。


タンニン鞣し剤は植物と合成とに分かれると言いましたが植物タンニンにも種類によって違いがあります。

革になった後に黄色く退色するか赤く退色するかなどの違いもありますが大きな違いは水に溶けだす温度です。

よく「ミモザやチェス(ト)ナットで鞣されています」と書かれていますがミモザタンニンは比較的低い水温でも溶け出します。
対してチェスナットタンニンはある程度温度がないと溶け出しません。ケブラチョやオークバークも同様です。

こういった性質を利用して雨でタンニンが流れ出ないように靴の革底にはオークバークやチェスナットで鞣された革が使われます。

(鞣しを終えた革の状態でもタンニンは容易に水に溶けだします。)

昔のイギリスではオークバークで鞣されるのが一般的でした。樫(オーク)の木が建築材などに使用されるようになってから代替品としてチェスナットやミモザが使われるようになってきました。これが大体1850年以降と言われます。

現在タンニン鞣しといえば液体に抽出したタンニン液に漬けて鞣します。タンニンは水溶性の物質なので合理的かと思います。

古い話ですがこれを樹皮そのものと皮を交互に重ね合わせてタンニンを浸透させる手法が以前のイギリスに存在していました。

どのくらい時間が掛かるのだろうと思いましたが実に1年半以上の鞣し期間を必要としたようです。

粉末にした樹皮を同時に併用したりしていたようですがとてつもなく長いですよね(^^;)


さて歴史にも触れだすとここからさらに数倍の文量を必要としますので、この辺でいったん切り上げます;;


今回は鞣しについて書いてみました。いかがでしたでしょうか。

革というのは古くから親しまれていて歴史を辿るとその地域の文化と密接な関わり合いを持っていたりします。

日本もそうですが戦争の影響を受けて方向転換を余儀なくされたことも多いです。

ここで書いたことはほんのわずかな部分ですが何か一つでも「知らなかった」「面白かった」「興味が出た」と思ってもらえたら嬉しいです。

(レザークラフトにはあまり役立ちそうにない話でしたね。。歴史の知識があっても上手くはなりませんから。。)


今回鞣しについて書きましたが個人的な考えでは革の品質を決めるのは鞣しではないと思っています。

鞣しはあくまでも皮を用途に向けて革へと加工するもので品質は原皮(あるいはその保存・処理方法)によって決まるものだと考えています。

その辺りは原皮の話としてまた書いてみようと思います。


タンニンについてもカテコール系、ピロガロール系といった分類や革分野以外での利用についてなど奥が深い物質なのでそのあたりもいつか詳しく掘り下げていけたらと思います。


近日中に公開する記事ではレザークラフトで作った作品の販売ノウハウについて書きます。こちらの方がまだレザークラフトに役立つ話になっているかと思います(^^;)

ご期待ください(^^)


ご覧いただきありがとうございました!


Natt Leather(ナットレザー)
店長 高橋 浩幸
http://leather-material.com
info@leather-material.com
〒174-0063
東京都板橋区前野町6-36-15-302
08012484194(平日10:00〜17:00)

calendar

S M T W T F S
      1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
30      
<< September 2018 >>

selected entries

categories

archives

recent comment

profile

search this site.

others

mobile

qrcode

powered

無料ブログ作成サービス JUGEM